植治の庭については、無鄰菴を皮切りに何回かシリーズ化したいと思っていたのだが、その後8年かかってようやく第二弾をブログにあげることができた(苦笑)。写真はいろいろ撮りためているので、これを機会にまとめて記事にしたいと思います。
今回紹介するのは、並河靖之七宝記念館である。七宝焼ってあまり知らないのだが、ペンダントなんかになっている民芸品という理解で良いのだろうか。陶芸はやっていたのでわかるのだが、陶芸と七宝焼の制作工程のどこが違うのかよくわからないなあー。どちらにも釉薬は使用するようです。
写真はちょうど2年前の9月に訪れたときのものだが、そのときは、すぐ近くにある「一澤帆布」でカバンが買うのが一番の目的で、ついでに南禅寺界隈も足を運んだように記憶している。
東大路通り、三条通からやや南に下ったところにお店はある。
筆者が学生時代は、周囲では結構持ち歩いている人が多かったように思う。但し当時は結構痛むのも早かったイメージがあって個人的な評価は微妙だったのだが、2年前にここで購入したショルダーバッグは、布製にもかかわらずあまりヘタることもなく、現在も愛用している。
前置きが長くなったが、並河靖之七宝記念館は、この一澤帆布より徒歩で数分のところにある。
建物の外観は見るからに伝統的な京町家で、ここを自宅兼工房として使用していたとのこと。
ちなみに、右側の築地塀は並河邸の敷地ではない。なんと、庭を策定した植治(小川治兵衛)の自宅だったとのこと。要するに、植治はお隣さんの家のお庭を作庭しているのである。
通り庭の部分も建築当時そのままの状態で保存されている。天窓があり意外に明るい。
屋内の様子。ガラス越しであれだが、奥にある客間にて訪問客を接遇した後に、七宝焼の商談を行っていたそうである。椅子とテーブルが置かれているが、七宝焼は明治時代の有数な輸出品の一つだったようで(九谷焼もその一つ)、明治時代に、海外から七宝焼を購入するために訪れる外国人客もいたようである。
お庭の様子は写真を中心に紹介します。
自然石をくり抜いて作ったとおぼしき手水鉢。粋を感じる。
植治の庭には「伽藍石」というのがよく見られるのだが、いわゆる寺社建築で用いる礎石である伽藍石を景石としてあしらうのが好みだったようである。
無鄰菴などと違って、お庭自体は純和風のお庭で、芝生は用いていない。
この庭の一番の特徴は、庭の中心に大胆に池を配置しているところだと思う。
京都にある植治の庭の多くは、琵琶湖疎水から水を引き込んで池や遣水をあしらっているが、この庭も琵琶湖疎水から水を引き込んで池を造営している。
池の中央に島まである。
個人的に一番感心したのがこの演出。
驚いたのは、池の範囲が建物の下にまで及んでいることと、建物の礎石として自然石をそのまま置いてあることである。こういう演出は建築や土木の人間はまずしない。いかにも造園修景的だなあと思う。
ここの場合は庭もさることながら、町家建築としても非常に立派なので、建物を見学するだけでも一見の価値はあると思います。